ADHDの子どもを教えて分かったこと
プロフィール: G・Jさん、34歳男性、家庭教師
今から8年ほど前のこと、知人からの紹介でADHDの子どもに家庭教師として、学校の勉強を教えることになりました。その子の名前を仮にA君とします。A君は当時小学校3年生でした。
学校でも授業中じっとしていることができず、他の生徒にも影響が及ぶということで、特別学級に所属していました。特別学級にもなかなか馴染めなかったようで、学力を心配したお母さんが少しでも勉強を好きになってくれるようにと、私に家庭教師の依頼をしてこられました。
これまでADHDの学生を受け持ったことはなかったのですが、親御さんの話を聞いて、引き受けることにしました。一回目にA君に会った時、彼はずっと下を向いていて、私と目を合わせることはありませんでした。きっと他の子たちのように、はじめは緊張しているのだろうと思っていましたが、話し始めてしばらく時間がたってもなかなか打ち解けてくれません。
結局やっと打ち解けてくれたと感じるまでに2週間ほどかかりました。勉強を教えるといっても、なかなか集中できないので一回の授業を長くても30分ほどにし、休憩や遊びを挟んでまた勉強に取り組むといった具合でした。
A君は特に算数が苦手で、掛け算にはとても苦労しました。しかし、簡単な問題をたくさんこなして、自信をつけさせること、そしてその都度よく褒めることを繰り返すことにより次第に克服していきました。
そこで気付いたのは、褒めることの大切さです。私が受け持っていた他の学生は、褒めてもそんなに大きいリアクションはありませんでしたが、A君は褒めるととても嬉しそうな顔をするのです。
当時私が注意したのは、必ず具体的に褒めるということです。例えば、「この問題が良くできたね!」と言う代わりに、「先生と一緒に勉強した方法を良く覚えていたね!だからこの問題もできたんだね、さすがA君!」と褒めるようにしたのです。そうすることで、A君も今後どうしたらいいかが次第に分かっていくようでした。
A君を教える時に注意した点がもう一つ。A君は長いセンテンスを聞くと混乱してしまうので、話は分かりやすく、一つ一つの文は短めにするということでした。簡単なことを一つ言ったら、分かっているかを確認する、分かっていたら次という具合です。
算数の問題でも、「最初にこうして、次にこう、それから…」という風に説明するのではなく、「最初はこうだよ」とた実際にやって見せた後、自分でやらせます。それが出来たたら次の段階へ進みます。時間は掛かりましたが、A君は確実に理解していきました。
算数は苦手なA君でしたが、あることには素晴らしい能力を発揮しました。A君は電車が大好きで、電車の色々な名前をたくさん覚えていたのです。それはそれはたくさん記憶していて私もその集中力には驚かされました。
A君は興味があることをする時には、並々ならぬ集中力を発揮し、話しかけてもなかなか返事をしませんでした。そうした時にはとりあえず気がすむまでそれをさせてから、次のことに取り組むことにしていました。
ADHDの子どもは、学力の面では少し遅れをとることがあるかもしれませんが、それは決してその子が劣っているということではありません。むしろ他の子どもより優れていることもたくさんあります。
また、成長するにつれ気持ちや態度が落ち着いていくようです。聞いてみるとA君のお母さんも小さい頃は似たような感じだったそうです。小さい頃、過度に落ち着きがなく親御さんがいつも心配していたと言っている友人も何人かいます。
周りがADHDの子どもを理解してあげ、温かい目で見守ってあげることが必要ではないでしょうか。
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